第10章−10
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 城門の陰に身を寄せるようにして取り次ぎの兵士が戻って来るのを待っているアシェス達の姿を、たまたま通りかかった何人かの善竜人間族が不審げにのぞき込んで行く。

 最初は門に隠れることもなしに堂々と立っているラーカの真っ赤な髪の色とその片腕がないのに注意を引かれて目を向けるのだが、やがて彼のすぐそばに立っているアシェスのダークレッドの髪の毛に気づくと、脅えたように慌てふためいて逃げて行くのだった。

 そんな善竜人間族の後ろ姿を、リンドは暗い目で見送る。

 彼らに悪気がないのはよくわかっている。
 自分達だって、エルスロンム城下街でバハムートの姿−特に銀色の髪と蒼い瞳を持った−を見たら、似たような反応を示すだろう。
 あからさまに避け、視線を反らし、背中を向けたりするに違いない。
 だから、仕方ないのだろうけど…。

 でも、やっぱり何か納得いかない…ような気がする。

「リンド達、別に悪いことしに来たんじゃないのに」

 思わずぽつりと呟いたリンドの頭を、ラーカがぽんぽんと叩いてやる。

「仕方ない、ドラッケンとバハムートッてのは昔っからこうだったんだからな」

 リンドは黙ったままうなずきを返しはしたが、表情の暗さは消えない。

 城下町の一般人でさえああまで露骨な反応を見せるのだから、バルデシオン城でなんかかくまってもらえないかもしれないと不安になってきたようだ。
 現に、一番最初に出会った兵士の顔からして自分達の来訪をあまり−というか全然快くは思っていないようにしか見えなかった。
 サースルーン王に取り次いでもらえたのが不思議なくらいだ。
 …下手をするとこのままここで追い返されるかもしれない…。

 ラーカがそんなことを考えている間もアシェスとカディスは何も言わずただ立っていた。

 アシェスは門柱の陰に身を潜め、濃茶色の瞳を上げて虚空の一点を真っすぐに見つめている。

 カディスは柱に背中をもたせかけて自分のブーツの爪先に目を落としていた。
 長く伸びた前髪がすっぽりと顔を覆っているので表情はわからないが、ラーカが考えていたのと同じようなことに思いを巡らせ、もしここを追い払われたら次はどこに行けばいいのかと頭を悩ませているのだろうとは容易に想像がついた。

 そんな彼らの様子を、城の入り口の脇に寝そべったシルヴァリオンが眺めている。
 敵意を含んだ視線を向けているわけではないが、さして好意を持っている様子でもない。
 それがまたリンドを落ち込ませている。

 やがて、入り口からさっきの兵士−ターフィーが姿を見せた。

「お待たせしました。王がお会いになるそうです。お入り下さい」

 固い声で促す。
 アシェス達は無言でそれに従った。

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