第15章−6
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 翌朝、防寒具にしっかりと身を固めたトーザとラーカは、ギンレイのいとこにあたる青年−フォーバル・ウェスティングハウスに案内されて、とりあえず氷の洞窟周辺の様子を調べて来ることにした。
 ギンレイとレイドフォードの両親が捕まっている場所の目星もつけて来なければならない。

 分厚い雪に覆われた不慣れなこの土地ではいつものような立ち回りは難しい。
 だからこそ、事前の下見をしっかりとして少しでも不利な状況に陥ってしまうことを避けなければ。
 地形についてはもちろんだが、敵の人数についても改めて確認しておく必要があるだろう。
 クローン・アンデッド兵士の数は無限───村に来た五人以外にも待機している奴がいる可能性は大きい。

 昨夜トーザとラーカは明日の行動について話し合ってみた。

 もし向こうの兵士がアンデッドだけなら、何百人いようとオレの敵ではないとラーカは言った。
 しかし相手も馬鹿ではないだろう。
 ラーカがアシェスを助け出したこと、つまりドラッケン随一の死体操者が敵に回ったことはとっくに相手側に知れ渡っているに違いない。

 だとすると、相手側の兵士がアンデッドばかりでなくただのクローン兵士が混ざっていてもおかしくはない。
 当然のことだが、ただのクローン兵士にはラーカの特殊能力は通用しないから、刃を交えるしかない。
 もしアンデッド兵士よりクローン兵士の数が常識外れに多いのであれば、正面から乗り込んで行くワケにはいかない。
 何らかの策略を練らなければ無理だ。

 そういう結論に達し、まずは二人で相手の構成を調べに行く、ということになった。
 ノルラッティとリンドはひとまず村に置いて行く。

 もし何もせずに一旦オフォックに引き返す羽目になった場合、無意味な往復は確実に体力を削り取る。
 女性であるノルラッティやまだ子供のリンドに無駄な労力を使わせるのはやはり得策ではない。
 ノルラッティもリンドも、別段反論することもなく大人しくその決定に従った。

「じゃあな、リンド。いい子で待ってろよ」
「うん。おにいちゃんも気をつけてね」
「ご無理はなさらないよう…」
「それではフォーバル殿、よろしく頼むでござる」

 毛皮のフード付きの黒い分厚いコートに全身を包んだフォーバルは、はにかんだような笑みを浮かべながらうなずく。

「どうか、お気をつけて…」
「…や、約束、守ってくれよ!」
「おにいちゃんに任せとけば大丈夫っ!」

 リンドが笑顔を向けると、レイドフォードは戸惑ったように俯いた。

「さあ、寒いから中に入っていましょう。トーザさん達が戻られるまでの間に、私達に出来ることはあったかしら…」

 ノルラッティに促され、リンドとレイドフォードは建物の中へ戻る。

 後に残って三人が歩いて行った遠くの方を眺めやっているギンレイ。

 その口許が、不意にニヤリと歪められたのに、誰も気づかなかった。

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