第5章−2
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(2)

「これからどうするんだね?」

 謁見の間で王座に腰を下ろしたサースルーンが、一段ばかり高くなっている所から前にいるチャーリーを見下ろす。
 権勢誇示は必要ないが、とりあえずの権威づけは王である以上必要だろうと考えて、王座は少しばかり段差を設けた所にある。

「夕食までにはまだ大分ありますもんねェ」
「もう腹が減ったのか?」
「冗談ですよ。…そうだなあ、城下町でもうろつきに行こうかな。人間の町や村は世界中にあるからあちこち回ったけど、善竜人間族の町はここにしかないから全然足を運ぶ機会がなくって、考えてみりゃ初めてですからね。まだ日も高いし」
「そうか、それが一番いいだろう。サイト、お前も一緒に行って来なさい」
「えッ、いいんですか?」
「もちろん。チャーリーと一緒に行動して、ガールディー直伝のいい加減な性格を少しは見習うといい」
「…王様は要するに私を敵に回したいんですか?」
「冗談だ、冗談。とりたてて見所もない町だが、まあ楽しんで来たまえ」


 チャーリーとサイトはとりあえず、バルデシオン城から出て来た。

「ところでサイト、お城に全然人がいなかったみたいだけど、どうして?」

 チャーリーが不意に尋ねる。

「邪竜人間族がいつどこの町や村を襲うかわからないので、兵士を数名ずつ組にして世界各地に派遣してるんです。騎士クラスの者は兵士詰所で今後の対策を話し合っています」

「なるほど…善竜人間族は大変だね」
「そんな風に感じたことはありませんが…」
「そうでなきゃやってらんないか。…それじゃあまァ、おのぼりさんでもしましょうか。なんかユニークな店とか建物とかない?」
「さあ…私も、町にはあまり出たことがありませんので…」
「…。ま、歩いてりゃ何か見つかるかな」

 歩き出そうとしたチャーリーの所に、グリフが駆け寄って来た。
 くぅ、と甘えた声。

「なに、お前も行きたいの? …連れて行ってあげたいのはやまやまだけど、やっぱダメだよ。犬や猫ならともかく、さすがにグリフォンは連れて歩くワケにいかないでしょ。大人しく城で待ってな」

 グリフは少しだけ寂しげな瞳でチャーリーを見たが、やがて諦めたようにうなだれた。

「その代わり、おみやげ買って来るから。ね?」

 グリフの頭にぽんと手を載せる。
 グリフは目を上げると、くゥ、とうなずいてみせた。

「それじゃ、行こッ、サイト!」

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