第11章−8
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(8)

「ファイアブレスが来るぞ!」

 隊長がスレイマンとエヴァンズの背中に叫んだ。
 レッド・ドラゴンが上空で翼を広げた。

 彼らの上に影が被さる。
 竜が長い首をもたげた。
 大きく息を吸い込む。

「アバス・ジ・ストーリン!」

 赤い竜が首を差し伸べて火炎を吐き出すと同時に、スレイマンとエヴァンズの呪文が完成した。
 呪文を唱えた本人達が怖くなるぐらい壮烈な吹雪のバリアが彼らの前、赤い竜の炎との間に立ち上がる。
 抜群のタイミングである。

 ただし、隊長は読み違いをしていた。
 ジュナが吐き出したのはファイアブレスではなく、それよりもう一段階威力の強いフレアブレスだったのである。

 しかし、二人の張ったバリアはよくそれに耐えた。
 火炎から騎士達と王家の洞窟の入り口をしっかりと護った。

 その代わりに、フレアブレスの熱のせいで激しい音と共に消滅してしまう。
 相殺されて、フレアブレスもかき消えた。

 レッド・ドラゴンが翼を振るって上空に停止した。
 憎々しげな瞳で地上を見やる。


 上空に赤いマントの騎士が残っているのを見て、ヴァシルがグリフを呼び寄せた。
 気づいたチャーリーはグリフの背中からメールを抱え上げる。
 その後にヴァシルが飛び移った。
 メールをシルヴァリオンの背に降ろす。

「アイツはオレに任せとけ」

 親指で騎士を示す。
 嬉しそうなカオだ。
 チャーリーはうなずいた。
 それからゴールドウィンの方を見る。

「下に降りといて下さい。すぐカタをつけますから」
「わかった。…しかし、大丈夫なのか?」

 地上は暖かい陽気に満たされていても高空は結構冷える。
 ましてやそこを高速で飛び回ったりしようものなら…言わずもがな、というヤツである。
 チャーリーの身体はすっかり冷え切り、顔色は青ざめ、唇は紫がかって来ている。
 見るからに大丈夫ではなさそうだ。

「気にしないで下さい、どうしようもないんですから…それじゃ」

 チャーリーはレッド・ドラゴンに向かって飛び去った。
 グリフはとっくの昔にヴァシルに急き立てられてシルヴァリオンのそばを離れていた。

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