番外編1−3

       

 

3.厄介な魔法

「魔法をかけられたのだ。肉体を若返らせる魔法をな」
「一体誰に?」
「弟…メフィルにだ。いや、正しくはメフィルに雇われた魔術師と言うべきだな」

 金さえ積まれればどんな非道な事だってする、弱い者を救うために駆使するべき魔法を金儲けの手段に用いる…チャーリーのような魔道士・魔術師も世界にはいくらもいるものなのである。

「弟は次代の王の座を狙っている。その為に目障りな俺を子供にして、王位を継げなくしたのだ」

 どこの国にでも王位継承のゴタゴタはあるらしい。

「…で、それで、私にどうしろと」
「ここまで聞いてわからんか? 俺にかかった魔法を解くんだ。お前なら出来るハズだ」
「…はあ…」

 一応首を縦には振ったものの、彼女はしばし考え込んでしまった。
 肉体を若返らせる魔法。
 そんなもの、あっただろうか。
 …あったとしても、私は聞いたことがない。
 つまり、知らない。
 結論としては、知らない魔法は解きようがない、ということになる。

「あの…大変申し訳ないんですが、私、体を若返らせる魔法なんて全然知らないんですよ。だから、私には解くことが出来ないんです。他の魔道士の所に行ってくれませんか」

「元に戻ればちゃんと報酬は払う。ナリは子供だが王子なのだぞ。信じないのか?」

「いえ、報酬の問題じゃないんです。私には出来ないんですよ」

「そこをなんとかしろ。世界一の大魔道士であるお前に出来なければ、他の誰にも俺を元に戻せないではないか!」

 きつい口調で言われると、外見が子供とは言えなかなか威厳というものがある。
 やはりレイは本当に王子らしい。
 雰囲気でわかる。
 しかし、今のレイのセリフには一つだけおかしなところがある。

「ちょ、ちょっと待って下さい。私は『世界一の大魔道士』なんかじゃ…現在その称号を受けているのは私の先生の…」

「はじめにそいつの所に行ったのだ、俺は」

 レイはチャーリーの言葉を苛々と遮った。

「世界一の称号はお前に譲ったとか聞いたぞ」

 自分もわからなかったもんだから、都合の良いことを言って逃げたようだ。
 元来がいい加減でどうしようもない人物だというのはわかっていたが、こんな風にして仕事を回してくるのだけはやめてほしい。
 後で『紹介料』などと称して報酬の何割かを掠め取るのもだ。

 しかし…今ここでレイにそういういきさつを説明するのは難しそうだ。
 少し話しただけでも、彼が人の意見に素直に耳を傾けるタイプでないことは明らか。
 下手に刺激するようなことを口に出したら、ますますややこしくなってしまう。
 ここはあきらめて大人しく依頼を受けるか…いくら彼女が知らないと言ったって、調べればそんな魔法のことぐらいすぐにわかるだろう。
 幸いにして、周囲には家にありったけの本が知らない魔法のことなら何でも調べて下さいとばかりに散らばっている。

「わかりました。依頼をお受けしましょう…しかし、魔法のことを調べるのに少し時間がかかります。その間、待っていただきますが」
「少しなら構わん。一週間後の戴冠式に間に合うようにさえしてもらえればそれでいい」
「一週間…ですか」

 チャーリーは軽く肩をすくめた。
 こりゃ、相当ぶんどらないとワリに合わないな。

 
       
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