番外編1−1

       

 

−モルガニー王家騒動記−

1.小さな訪問者

 その日、チャーリーはこれでもかとばかりにヒマをもて余していた。

 あまりにもすることがないので、整理整頓の大嫌いな彼女が思わず部屋の掃除を始めてしまったほどだ。

 もう長らく本棚に詰め込みっぱなしになっていた古文書の類いを一度全部放り出してホコリを払い、かなり前にいらなくなっていた小物類を捨て、床をホウキで掃く。
 気合を入れてやれば半日ほどで済むハズの仕事である。
 いや、得意の魔法を駆使して行えばもっと短時間で終了するだろうコトである。

 しかし、他にするコトがなくて仕方なしに掃除にとりかかっているような人間に、そんなテキパキと仕事を進められるワケがない。
 だもんだから本棚から本を全部引っ張り出したときには、すでに昼近くなっていた。

 さすがに自分の手際の悪さに呆れた彼女。
 このままでは明日になっても掃除が終わらないと悟り、そろそろ焦り始める。

 とりあえずこの続きは昼ご飯のあとにしよう。
 一人で判断して、立ち上がる。

 そのとき、入り口のドアをコンコンと誰かがノックする音。

 お客さんかな…、珍しいな…。

 木で出来たドアを開ける。
 顔だけ出して外を見る。
 …誰もいない。

「?」

 イタズラ? それにしてもずいぶん逃げ足の早い…。

「コラ、どこを見てるんだ」

 突然、足元から声が聞こえた。
 見下ろすと、身長三〇センチ弱の子供が腕組みしてチャーリーを見上げていた…。

 
       
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