2.態度の悪い子供
「それで…ご用件は?」
取り散らかしまくった部屋の中で、態度だけが異常にデカい子供にお茶を注いでやりながら、チャーリーはつとめて穏やかに尋ねた。
「狭い部屋だな。それに、異常に散らかってる。本人の性格が表れているかのようだぞ」
彼女の質問をまるで無視して、子供は文句を言い始めた。
相手が子供でなければ火炎呪文の一つでもお見舞いしてやるところなのになどと考えながら、チャーリーはカップを差し出した。
礼も言わずにそれに口をつけて、
「マズイ。安い茶だな」
子供は顔をしかめた。
「そりゃ悪かったですね…」
今この場に彼女の親友である格闘家のヴァシル・レドアがいたら、間違いなく子供を張り飛ばしていただろうなどと考えながら、自分のカップにも『安い』茶を注ぐ。
子供はカップをテーブルに戻すと、話し始めた。
「俺の名はレイ・ディルバード。モルガニー国の第一王子だ」
「……は?」
モロに戸惑って思わず聞き返してしまう。
今この子は何と言ったんだ…確か、モルガニー国の第一王子だとかなんとか…。
そんなハズはない。
モルガニーの第一王子…ならば、すでに、確実に二十歳は越えている。
こんな、小生意気なガキのわけがない。
「失礼…だけど、今何と?」
「にわかには信じられんのもわかる。しかし、俺は本当にモルガニーの王子だ」
「…事情があるみたいですね」
「なければこんなカッコウはしておらん」
この子供が本当に二十歳過ぎの王子ならば、ここまで態度がデカいのにもうなずける。
「話して下さい。出来るだけ手短かに」
言いながら、彼女は部屋に山と積まれた古本にチラッと目をやった。
…この片付けは明日になるな。
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